山室 彩
声を通して自分と対話でき、
本当の自分の声で相手と関われる人を
世の中に増やしていきたい。
外資系航空会社にて客室乗務員、役員秘書、VIPデスク、乗務員採用業務等を担当。不規則な生活の中で、こころ・からだと声の関わりに興味を持つ。自分自身と対話する心地よさをお伝えしていきます。
2007年より楠瀬誠志郎に師事。
- 担当クラス
- INTERVIEW
・Capyum
・Papyum
・Rapyum
・Medi
ー彩先生がインストラクターになられたきっかけは、身体の不調だったのですね。
はい。身体がしびれて動きづらいという症状が出ました。突発的に起こるというよりも、24時間そんな感じだったんです。身体の機能を疑って病院に行き、神経内科にかかって脳をMRIで撮ったんですが、異常は見つかりませんでした。
ーその症状があって、なぜパラを選ばれたのですか?
私、今は名古屋に住んでいますが、当時は実家のある東京港区にいて、新聞の中に入ってくるオシャレ情報冊子にパラが載っていたんですよ。すごくよさそうだなと思って、体験レッスンに行ってそのまま入ったという感じです。
ーいつ頃始められたんですか?
たしか2007年ぐらいだと思います。2006年の暮れに体験したのかもしれません。
ー以前は航空会社でキャビンアテンダントをされていたんですね。
はい、そうです。韓国の航空会社に勤めていました。客室乗務員をしていた頃は日本にほとんどいなくて、まだパラに出会っていなかったんですね。途中からオフィス勤務を志望して東京で働きだして、秘書になった頃に体調を崩しました。日常生活に支障があった訳ではないのですけど、自分では嫌だなと思ったのでレッスンを始めました。
ー彩先生はパラに通われて、どんな変化がありましたか?
しびれや喉の苦しさが、気づいたらなくなっていたというか、忘れていたというのが、まず大きいと思います。今でも疲れがたまって心と身体がぴったりしていない時は、筋肉の緊張などで近い症状が出ることもありますが、対処法が分かっています。パラでしているストレッチやボディーグルーブ(レッスンの基本動作)で声を響かせると、本当の自分に戻れるというか、それが自分としては大きなものを得たなと思っています。
ー声についてはいかがでしょうか?
私、実はもともと声がものすごく大きくて、とにかくうるさいと言われていたんです。今思うとキンキン声というか、下の低い響きが出ていなかったというか。パラのレッスンを受けてからは、うるさいと言われることはなくなりました。うるさいと言われていた当時は、周りの人は迷惑だったのかなと思っています。
ー普段の仕事や人間関係で良くなったことはありましたか?
うるさくなくなったことは周りにとってハッピーだったと思います。私、レッスンが始まってからは空港で接客の仕事をしていたんですけど、色んなクレームを受けるんですね。接客業なので仕方がないんですけど、私がクレーム対応すると、提案していることが良いというよりも、下の低い響きを意識してお話すると、変に盛り上がらないというか、お客様が落ち着いてお話しになるというか。それが、働いていてすごい助かったな、よかったなと思いました。
ーそれはすごい発見ですね。クレーム対応は話す内容を重視しがちですけれど、声の響きでコミュニケーションできるということですよね。
はい。身に付けておくと、メリットになる部分だなと思います。
ー彩先生はどんな流れでインストラクターになられたのですか?
2007年に東京でレッスンをはじめて、割とすぐにインストラクターになリました。半年間、表参道でレッスンをしていて、せっかくインストラクターになったし、結婚で行く名古屋でパラを広めたいと思って「名古屋でレッスンをしたいです」と言ってしばらくしてから、Breavo-para名古屋支店が開かれることになりました。
ー彩先生の一言がきっかけだったんですね。
私が名古屋に行くというので、当時いた先生に相談したりして、「いいんじゃない」という話になったと思います。さらにすごいのが、私は2012年から主人が転勤で中国に行って、2017年まで名古屋を離れたんですよ。その間も、仁先生、景子先生が東京から通って名古屋支店を保ってくださったのが、私にとってとても大きなことでした。すごくありがたいですし、その分名古屋でもパラのメソッドを広めたいなと思っています。
ーレッスンを通じて受講生に何を持ち帰ってほしいですか?
「自分と仲良くする楽しさ」ですね。すごく抽象的なのですけど…。パラのレッスンって、ケアだったり、ストレッチだったり、身体をメンテナンスする中で、毎週同じボディーグルーブをしていても、身体の伸び方や動きが全然違う。ここまで自分の身体に徹底的に集中できる時間は、普段の生活の中であまりないと思うんです。ボディーグルーブの20分の中で、「先週はこうだったけど、今週はこうなっている。何でだろう?今週は忙しかったからかな」などの気づきもあります。
ーそれはインストラクターになってからも変わらず?
そうですね。インストラクターになってからも、こうすればボディーグルーブのこの形は綺麗だなとか、自分の身体の動かし方の研究ができる訳ですよね。そういう時間が取れることがすごく贅沢だなと思っています。自分の声に集中して、「今日は響きが出づらいな」とか、自分のことに集中できる贅沢な時間を、私は「自分と仲良くなる」と表現しています。私はそうやって自問自答するのがすごく楽しくて、オタクっぽいんですけど(笑)そうやって自分で感じながら身体をほぐすと、ただボーッと形をなぞるだけのストレッチよりも、終わった後のスッキリ感、生まれ変わり感が大きい気がするんですよね。それが面白さというか、「自分と仲良くする楽しさ」かなと思います。
ー面白いですね。ところで、彩先生にとって「声」とはどんな存在ですか?
「自分のあり方」というのが、私の中では一番しっくりきています。音を通して自分を内観できる。すごくシンプルなんですけど、自分の今日の感情と体調を声で測る。そういう風に使えるものですね。さらに声の素晴らしい所は、相手と関われるということ。そうやって整えた自分の響きで相手とどう関われるかという部分で、「自分のあり方」だと思っています。
ーそれは普段から感じられているということでしょうか?
はい。たぶん寝ている時以外は頭の片隅でずーっと感じているんですよね。例えば、子どもに優しくしたいのに意地悪な声しか出ないとしたら、今の状態をそうだと感じます。私は声を仕事にしていてアンテナが立っているので、声を通して自分の感情をいつもみていると思うんです。体調もいつも声というフィルターを通してみています。逆に思った通りにならなくてモヤモヤしている時は、声を知らない時のほうがシンプルだったなと思うこともありますが、物事を洞察できているのかなと思います。←最終文を少し読みやすく修正いたしました。
ーご自身の声の響きはどのような変化を感じられていますか?
レッスンを始めたばかりの頃は「響く」ということがよく分からなくて、地道に「あー」とか発声していて、ある日突然、「響くってこういうことか!」と分かった時があったんですよね。いったん胸に響くという感覚が分かったその日から、気持ちがいい生活が続いています。
ー普段のお子さんや旦那さんとの関わりも変わってきましたか?
娘は私が声のことを始めてから出会った人間なので、彼女とはそういうお付き合いをしていますけど、主人や家族、友人もそういうフィードバックは触れないので、明確な意見を聞いたことはないですね。
ただ、レッスンを始める前は「いい声だね」と言われたことが、子どもの頃に一回あるだけだったのが、レッスンを始めてからは声を褒められる機会が何十倍にも増えました。
ー何十倍にも!それはすごいことですね。彩先生がインストラクターをされてきて嬉しかったことは?
毎回のレッスンでは「嬉しいな」と思うことばかりですね。皆さんレッスンを受けた後は受ける前よりも顔がすっきりしているんですよね。レッスンは毎回楽しいですし、自分自身もレッスンが終わった後には、元気だなと思えます。自分も受講生の皆さんもすっきりしているので、レッスンが終わる時に嬉しいなと思います。特に本当に元気がない方もたまにいるんです。悩んでいるような顔をされているんですけど、レッスン後に別人みたいな表情になったら、「やったー」って思います(笑)
ー日によってそういう状態の方もいらっしゃるんですね。
そうなんです。前半はこの世の終わりみたいな悩んだ顔で、帰る時は笑顔だったりするんですね。頑張って来てくださったことによって、その人の今日という一日がちょっとでも有意義でプラスになったら嬉しいなって。人生は時間の積み重ねだから、どこでどういう分岐点があるか分からなくて、落ち込んだりすることもあるとは思うんですけど、レッスンが楽しくなる分かれ道になれれば嬉しいですね。
ー他にも嬉しい瞬間はありますか?
受講生がご自身の変化を言葉にして伝えてくださる時です。自分で言葉にされるのは、自分で自分の変化が腑に落ちている状態だと思うんですよね。それを自分の中でとどめておかないで、言葉にして私にまで伝えてくださるというのは特別な喜びですし、受講生の変化がすごく嬉しいです。
ー具体的にはどんな声がありましたか?
例えば、「自分でも思うんですけど、僕の声響いていますよね」とか、レッスンで月に一回している四股踏みが「先月よりも楽になりました」など様々です。自分の声や身体の変化にしっかりと気づいているんだと嬉しくなります。
ー彩先生にとって理想的なレッスンとはどんなレッスンですか?
とにかく私は元気になってほしい。パラの理念に「生きる力」というのがあるんですけど、「生きる力」は勝手に皆さんの中からむくむくと出てくると思うんです。その「生きる力」を与えるレッスンが根本にあるので、元気な姿で帰っていただくのがとにかく理想的なレッスンです。それに達するために私が影響できる空間という意味で目指しているのが、自分でも気持ちいいなと思う神社のような空気です。
ーとても興味深いです。どんな状態なのでしょうか?
静寂と躍動が共にあるイメージですね。ただ単にシーンとしているだけではなくて、受講生の皆さんの生命力が声を通してそこにあって、受講生の一人ひとりが自分を内観する時間がありつつ、お互いの響く声が共鳴しあって、さらに声が出てくる感じです。
ー静寂と躍動が実はつながっているみたいな?
はい。つながっていると思います。
ーところで彩先生の趣味は何ですか?
「歩くこと」ですね。買い物に行った後に時間がある場合は、とりあえず歩きます。あてもなくウィンドーショッピングすることもありますし、何の考えもなしに「ここの道曲がってみたら、どこに行くんだろう?」など感じながら歩く時もありますね。トレッキングに行ったとしても、「あそこ行ってみたらどうなるんだろう?」「そこを曲がったらどんな景色が見えるんだろう?」など、山の中でもデパートの中でも同じなんですけど、一つその先を曲がってみたらとか、そんな感じで、特に目的もなくうろうろ、フラフラするのが好きです。
ー彩先生は「お母さんを元気にするレッスン」も目指されているそうですね。
お母さんだけを集めたレッスンができたら楽しいなと思いますし、医学的なこともクリアになれば、妊婦さんにも来てほしい。お腹の中の赤ちゃんに聴かせてあげるレッスンなど、色々勉強して実現できたらいいなと思っています。
ーそれはニーズがありそうですね。お母さんは毎日ストレスがかかるので、声を通して自分自身もお子さんも癒すことができれば。
そうなんです。声を通して自分を内観することもできますし、24時間子どもの面倒を見ているお母さんにとっては、月に1回、週に1回、30分でも1時間でもそんな時間を提供できれば、とてもいいんじゃないかと思っています。
ー今後の名古屋支店の目標などはありますか?
たくさんの方にパラを知ってもらうことですね。例えばヨガに通っている多くの人たちは自分との対話を楽しんでいる方たちだと思います。パラのレッスンには、そんなヨガ的な自己対話に加えて、他者と関わりが持てる声があるという強みがあります。
ーすごく特徴的なところですよね。
はい。さらに、「歌を歌いましょう」と練習を一生懸命するような普通のボイストレーニングと違って、テクニックにとらわれない本質の部分を身に付けられるのが特徴ですね。本質だから、パラのレッスンは実用にももちろん対応できる。プレゼンや人前で発表するからという理由で入る人がどうしても多いと思います。それも一つの入り口なんですけど、声を磨くということは特別な時のためのものではなくて、声を使う身体がある人にとって誰もが一度は勉強しておいたほうがいいものだよ、ということを多くの人に知ってもらいたいです。
ー彩先生は表情のレッスン講座も不定期に開催されています。相手も明るい気持ちになれる表情はどうすれば作れるのでしょうか?
簡単に言ってしまうとやはり「笑顔」なんです。誰もが安心する表情ですしね。ただ、笑おうと思っても顔のどこかが緊張していたりすると、本来持っている顔の筋肉が使えないんですよね。するとひきつった表情になってしまって、全然笑っていない顔になってしまいます。先日も顔の筋肉をゆるめて、使い方を知るレッスンを行いました。実は、明るい声が出る身体と、明るい表情を作れる身体って同じだなと思います。もちろん顔の筋肉トレーニングは有効なんですけれど、身体全体の在り方としては、筋肉をしっかりゆるめることが大事だと思います。
ー日常でできるレッスンはありますか?
一番簡単な方法があります。朝顔を洗ったり歯を磨いたりする時って必ず鏡を見ますよね?その時に鏡の中の自分にニコって笑うだけです。すると、笑い方が左右対称じゃなかったり、目が笑っていなかったりして、それに対して「こうかな」と工夫しながら笑ってみる。10秒ぐらい笑顔をキープしてみると最初はプルプルすると思うんですけど、フルスマイルで一番ニコッとした顔をキープすると、明るい表情を使えるようになってくると思いますよ。